実装ガイド

Prusa と Bondtech の8ノズル toolchanger「INDX」、 パージ材を 13mg まで削減。CORE One 用に発表

Prusa Research と Bondtech が共同開発した8ノズル toolchanger「INDX」 が CORE One/CORE One+ 用に発表。 誘導加熱で空のパッシブノズルを瞬時に温める仕組みで、 ツール交換時のパージ材は約 13mg、 交換時間は約 12 秒。 Founders Edition は €669 / $749 から。

Prusa ResearchBondtech が共同開発した8ノズル toolchanger INDX が、Prusa の最新機種 CORE One / CORE One+ 用のアップグレードキットとして 2025 年 11 月 19 日(Formnext 2025 開幕日)に発表された。仕組みの中心は、アクティブな「Smart Head」 が誘導加熱でパッシブなノズルを瞬時に温める構成で、ツール交換時のパージ材は約 13mg(米粒より小さい)、交換時間は約 12 秒に抑えられている。Founders Edition の予約受付は 4 ツールで €669 / $749、8 ツールで €899 / $999 から始まり、出荷は 2026 年 6 月開始予定だ。

CORE One INDX キービジュアル(Prusa Research 公式 blog)

「アクティブな1台 × パッシブ多数」 という設計

INDX の構造は、これまでの toolchanger 系プリンタ(E3D ToolChangerPrusa XL など)と一線を画す。E3D ToolChanger や Prusa XL は、各ツールがそれぞれヒーター・サーミスタ・配線を備えた「フル装備のホットエンド」 を抱える構成で、追加ツールあたりの単価が高くなる。INDX は逆に、ヒーターと制御電子回路を1個のアクティブな Smart Head に集約し、残りの 7 個(4 ツール構成では 3 個)はワイヤーもサーミスタもないパッシブなノズルとして並べる構造に切り替えた。

Smart Head が誘導コイルを内蔵していて、パッシブノズルを格納時に瞬時に加熱する仕組みだ。Prusa の Bondtech 公式紹介ページ によれば、ノズルは室温から動作温度までを「数秒」 で立ち上がり、ツール交換後すぐに印刷を再開できる。スペックを整理すると次のようになる。

  • 対応機種: CORE One / CORE One+ 専用(CORE One L サポートは順次)
  • ツール数: 標準 8 種、CORE One L で理論最大 10 種
  • パッシブツール間隔: 中心間 35mm
  • ツールヘッド重量: 345g(1 ツール装着時)
  • 最大ノズル温度: 300°C 以上
  • 最大流量: 40mm³/s(220°C, 周囲 25°C 計測)
  • ノズル: 硬化 CHT(高流量対応)、0.25 / 0.4 / 0.8mm から選択
  • フィラメント径: 1.75mm
  • ツール交換時間: 1 ノズル離脱から次ノズル印刷再開まで約 12 秒(PLA)
  • パージ材: 約 13mg / 1 交換(米粒より小さい)

パージ材 13mg という数値は、現行マルチカラー機の中では極めて少ない部類だ。Prusa の Orders Now Open ブログ記事 は「最も効率的な競合システムと比較して 5 分の 1、フィラメント巻き戻し方式の標準的なシステムと比較して 30 分の 1 のパージ材」 と説明している。

Bambu AMS / Prusa MMU との設計思想の違い

マルチカラー印刷の市場は、現状大きく2つのアプローチに分かれている。

  • フィラメント切替型Bambu Lab AMSPrusa MMU3 など): 1 つのホットエンドにフィラメントを順番に通し、色替えのたびにノズル内のフィラメントを押し出して入れ替える。仕組みがシンプルで安価だが、色替えごとに数 g 単位のパージ材(捨て塊・purge tower)が発生する
  • toolchanger 型(E3D ToolChanger、Prusa XL、INDX): ノズルそのものを物理的に切り替えるため、パージは原理的に最小化。一方でツールごとのコストと機構複雑性が増す

Bambu Lab AMS は普及機の代表として広く出回ったが、フィラメントを大量に捨てる「purge waste」 はコミュニティで根強い課題として議論されてきた。Prusa MMU3 も同様の構造で、パージタワーを後処理で取り除く運用が前提だった。

INDX が市場で位置を取る角度は明快だ。toolchanger の「パージ最小化」 と、フィラメント切替型の「ツール単価の安さ」 を、誘導加熱とパッシブノズルの組み合わせで両立させる。Bondtech は実際、「electronics-free」 のパッシブノズルが安価であることを設計的価値として強調しており、ツールあたりの追加コストを下げることで多色化のしきい値を下げている。

INDX の Smart Head と Thin Passive Tools(Prusa Research 公式 blog)

価格・出荷スケジュール・アップグレード対応

商業情報を整理する。

  • 発表日: 2025 年 11 月 19 日(Formnext 2025、Frankfurt)
  • 販売チャネル(Stage 1): Bondtech 公式サイトでの予約販売
  • Founders Edition: 1,000 台限定、Bondtech から先行出荷
  • 販売チャネル(Stage 2): Prusa e-shop でも展開
  • 価格: 4 ツール €669 / $749、8 ツール €899 / $999(Founders Edition 初回バッチ価格)
  • 出荷開始: 2026 年 6 月
  • 対応機: 既存の CORE One / CORE One+ にアップグレードキットで対応、後日 INDX 込みの組み立て済み機種も投入予定

CORE One は Prusa が i3 系から脱却して採用した CoreXY ベースの上位機で、今回の INDX は「単色機を 8 色機に変える純正アップグレード」 として既存ユーザーを取り込む経路に最適化されている。3D プリンタファーム運用者の視点からは、1 台あたり 8 色対応が安価に手に入ることで、多色プロトタイプや小ロット完成品の取り回しが大きく変わる可能性がある。

production 利用と日本国内での導入条件

3D プリンタファーム運営者にとって、マルチカラーは「やりたいが運用が割に合わない」 領域だった。深圳・金石華塑科技の Bambu Lab 5,000 台量産ファーム のような構成でも、AMS のパージ材コストとパージタワー処理が、量産時のオペレーション設計に影を落とす。INDX のようにパージ材を 1 桁 mg まで削減できる toolchanger は、production 利用での歩留まりを大きく改善する候補になる。

国内の業務用代理店ルート(APPLE TREE など)が CORE One INDX を扱うかは現時点で未公表だが、Prusa は元々日本に直販と代理店を持つメーカーであり、上市後の国内入荷自体は時間の問題と見られる。論点はむしろ、Founders Edition 1,000 台の世界配分のなかで、日本のユーザーや小規模ファーム運営者がどのタイミングで実機検証に入れるかにある。

「nozzle 自体を物理的に切り替える」 toolchanger 路線は、マルチカラー印刷の本流が「フィラメント切替・大量パージ」 から徐々にシフトしていく節目になり得る。誘導加熱と passive nozzle の組み合わせという設計は、Bambu Lab 系が次世代機で同じ路線を採るかどうかを含めて、2026 年以降のマルチカラー機の競争軸を再定義する材料になる。


出典