ソニーAIの卓球ロボ「Ace」、エリート選手相手に5戦3勝。Nature 2026年4月22日号に掲載
ソニーAIが開発した自律卓球ロボット「Ace」が、エリート選手5名との対戦で3勝、Tリーグのプロ選手も含む追試では3名全員から少なくとも1勝ずつを奪った。論文は2026年4月22日付のNature第8110号に掲載され、コードと評価環境が公開されている。
ソニー AI が開発した自律卓球ロボット Ace が、エリート選手5名との対戦で3勝、T リーグのプロ選手2名との初戦は0勝に終わったが、その後の追試では2025年12月のプロ1名、2026年3月にはプロ3名全員から少なくとも1勝ずつを奪った。論文は Nature 第8110号(2026年4月22日付)に掲載 され、研究プロジェクトのコードと評価環境が GitHub で公開されている。1983年から続く卓球ロボット研究で長く壁とされてきた高速ボールの実時間処理が、競技レベルの相手と実戦で噛み合った形だ。

Project Ace、Nature 表紙へ
Ace は、ソニーグループの AI 研究部門ソニー AI が進めてきた研究プロジェクト Project Ace の成果として、2026年4月22日に発表された。シミュレーション内での深層強化学習をベースに、ソニーセミコンダクタソリューションズのイメージセンサと組み合わせて開発されている。論文タイトルは 『Outplaying elite table tennis players with an autonomous robot』 で、Nature 誌 2026年4月22日発行の第8110号の表紙級扱いで掲載された。
ソニー AI 公式ブログの取材記事 によれば、対戦相手は10年以上の現役経験と全国大会出場経験を持つエリート選手5名と、日本卓球 T リーグのプロ選手たちだ。Sony AI チューリッヒオフィスの Project Ace リード Peter Dürr 氏は「自律型ロボットが物理的空間で人間の反応速度や意思決定に匹敵し、競技スポーツで勝利し得ることを実証した研究」と位置づけ、チーフサイエンティストの Peter Stone 氏も「正確さとスピードが求められる現実世界で AI システムが認識・推論・行動できることを初めて示した節目」と評価している。

IMX636 イベントセンサで200Hzのボール追従
Ace のセンサ・モデル系の構成は次の通り。
- カメラ系: IMX273 搭載カメラ9台 + IMX636 イベントベースセンサ3台
- ボール追従: 200Hz で3次元位置を推定
- 対応速度: ボール線速度 秒速20m 超
- 対応回転: 最大450 rad/s(秒間およそ72回転)、毎秒160回転超のスピンに対応
- リターン率: 高速スピンボールに対して75%超を安定維持
- 学習: シミュレーションでの深層強化学習をベースとしたエンドツーエンド方策
IMX636 を使ったイベントベースセンサは、輝度変化が起きた画素だけを高頻度で読み出す仕組みで、フレームレート全体を上げずに高速物体を追える点が特徴だ。Ace はこれを3台と通常の CMOS センサ9台で組み合わせ、200Hz でボールの3次元位置を出し続ける。学習はシミュレーションで進め、実機への転移を前提に設計されている。
プロ3名全員から1勝以上、平真由香選手の評
対戦記録のサマリ。
- エリート選手戦: 5名と13ゲーム中7勝、3マッチ勝利
- プロ選手戦(2025年初出版時): 2名と対戦、0勝
- 2025年12月の追試: プロ1名に勝利
- 2026年3月の追試: プロ3名全員から少なくとも1ゲーム獲得
- 論文: Nature 第8110号 (2026-04-22)
- 公開: コード・評価環境を GitHub で配布
対戦したプロ選手の一人、平真由香選手 は元記事で「予測が非常に難しく、感情を表に出さないので相手の反応を読み取れず、どんなショットを嫌がるのか分からない」と評している。スポーツ用途で人と対峙するロボット研究は1983年から続いてきたが、秒速20m 級のボールと毎秒数百ラジアンの回転を実時間で扱う構成が論文として提示されたのは今回が初めてだ。

産業ロボットからスポーツ・身体知への射程
日本のロボット研究としては、産業用途以外の文脈——競技スポーツ——で Nature 本誌の表紙級評価を取った点でも、これまでの工場ロボット報道とは違う読者層に届く成果になっている。卓球というドメインは、ボールの軌道予測(物理ベース)とラケット制御(精密モータ)、対戦相手の身体動作読みという3つの問題が同時に出てくる総合タスクで、シングルタスクの強化学習研究では収まりきらない。
ソニー側はあくまで「物理 AI(physical AI)の節目」と位置づけており、卓球が最終目的ではない。スポーツの身体知を学習対象に置くアプローチは、Boston Dynamics や TRI の LBM 路線とは独立した「センサ × 強化学習 × 高速制御」のスタックを示しており、家庭ロボット・介護・接客のいずれに展開するかは続報で見えてくる。論文・コード・GitHub 公開という研究側の透明性も、今後の再現研究の入口として大きい。
出典
- Outplaying elite table tennis players with an autonomous robot(Nature 第8110号, 2026-04-22)
- Project Ace: Sony AI’s Autonomous Table Tennis Robot(Sony AI 公式 press release, 2026-04-22)
- Inside Project Ace(Sony AI 公式 blog)
- Project Ace 公式ランディングページ(Sony AI)
- Sony AI’s Research Paper Published in Nature(Sony Semiconductor Solutions, 2026-04-23)
- Sony AI Project Ace ハイライト動画(YouTube, Sony AI)