米陸軍ピカティニー兵器廠、3Dプリンタ50台超の「Additive Makerspace」を開設
米陸軍がニュージャージー州ピカティニー兵器廠に、3Dプリンタ50台超を集約した製造拠点「Additive Makerspace」を2026年3月19日に開設した。プラスチック・金属・セラミック・複合材まで対応し、設計から試作・部品製造までを一拠点で回せる構成だ。
米陸軍は2026年3月19日、ニュージャージー州のピカティニー兵器廠に積層造形(AM)拠点「Additive Makerspace」を開設した。50台を超える3D プリンタを一拠点に集め、プラスチック・金属・セラミック・複合材まで対応する。エンジニアが設計から試作・実部品まで一気通貫で回せる構成で、軍系の AM 施設としては最大級の規模となる。

DEVCOM 兵器センター AMPD が運営
施設の運営は、米陸軍戦闘能力開発コマンド(DEVCOM)兵器センター内の弾薬技術工学センター(METC)配下にある分析・材料・プロトタイピング部門(AMPD)が担う。エンジニア起点で設計・試作・小ロット製造までを進める「メーカースペース」型の運用が想定されている。
米陸軍公式記事 によれば、AMPD の機械技術者 Matthew Clemente 氏は「ピカティニーのコミュニティが試作設計と製造に取り組むための場だ」と位置づけており、AMPD 上級科学技術部長の Thomas Fasano 氏も「兵器センターのエンジニアがこれらの技術と専門知識を活用するための価値あるツールになる」と述べている。
ピカティニー兵器廠は20世紀初頭から弾薬・兵器開発の中核拠点として位置づけられてきた施設で、今回の Makerspace はその系譜上にある投資となる。陸軍全体としては「製造を必要な場所に近づける」流れがあり、ジョージア州フォート・ムーアの Maneuver Innovation Lab、ノースカロライナ州フォート・ブラッグの Airborne Innovation Lab など、より前線寄りの AM 拠点も並行して整備されている。

樹脂から金属まで、設計データ起点で工法切替
施設のスペックと運営構成。
- 3D プリンタ: 50台超を集約
- 対応素材: プラスチック、金属、セラミック、複合材
- 対応用途: 試作、設計検証、実用部品の製造、補修部品供給
- 運営組織: DEVCOM 兵器センター AMPD(METC 配下)
樹脂系プリンタでの治具・試作品づくりから金属積層造形による実用部品まで、複数の方式を一拠点に揃えた点が大きい。これによりエンジニアは設計データを起点に、その場で素材や工法を切り替えながら検証サイクルを回せる構成になる。
陸軍は施設の位置づけを「ボトムアップのイノベーション文化を支える場」とし、現場の発案を実装に繋げる回路として運用する考えを示している。試作と実部品の境目を曖昧にする AM の特性を、調達プロセスの中にどう組み込むかが論点になる——治具レベルなら現場決済、構造部品なら正式承認、というラインの引き方を、運用しながら詰めていく段階だ。

中央集約 × 前線寄りラボの二層構造
開設情報。
- 開設日: 2026年3月19日(リボンカット式典)
- 所在地: ニュージャージー州ピカティニー兵器廠
- 位置づけ: DEVCOM 兵器センター内 Makerspace
50台超を一拠点に集約してエンジニア起点の運用に振った構成は、調達戦略の実装事例として読み解ける。中央集約型の AM 拠点を整え、フォート・ムーアやフォート・ブラッグといった前線寄りのラボと組み合わせる二層構造は、自治体・物流・建設で「内製化×分散運用」を検討する組織にも参考になる設計だ。
軍の AM 投資は、平時のメーカースペース活用とは別の制約条件を抱える——機密性、調達ルール、軍規格適合、サプライチェーン途絶対応——が、それらを解いた事例として民間企業の内製化検討にも応用が効く構造になっている。日本国内でも防衛装備庁系の AM 取り組みは進んでいるが、50台一拠点でエンジニアに開放する形態が公開ベースで動くかどうかは、今後の比較材料になる。